« ちゃんこ鍋 | トップページ | 私学共済①<年金・医療保険> »

2006年9月 8日 (金)

「捨てる」

小澤勲さんの『ケアってなんだろう』(医学書院)という本に紹介されていた藤川幸之助さんの詩集がほしくて買い求めました。

「捨てる」

ある日

突然

母が車の窓からゴミを捨てた

ティッシュが花びらのように

車から遠ざかる

セロファンが春の光に

キラキラと光って

私たちから遠ざかっていった

後続の車の人から怒鳴られた

事情を話し

父とならんで頭を下げた

母がその大きな怒鳴り声を聞いて

笑うものだから

怒鳴り声がさらに大きくなる

母の笑い声はいつもよりまして

高らかだった

母は人の話を聞かなくなった

母は言葉の入ってくる場所を

念入りにふさいで

まず言葉を捨てた

そして

母は女を捨てた

母は母であることを捨てた

母は妻であることを捨てた

母はみえを捨てた

母は父を捨てた

母は過去を捨てた

母は私を捨てた

母はすべてを捨て去って

そして一つの命になった

でも私には

母は母のままであった

母が生きることを捨てる時

母の中から

どんな美しい花が咲き

どんな美しい光が輝き

私から遠ざかっていくのだろうか

 藤川幸之助『マザー』ポプラ社、2000年

今日、ある研修会で講演された特別養護老人ホームの施設長は認知症ケアについて、

「その方の表面に現れない、奥の奥にある心の言葉や寂しさにどれだけ共感できるかが大切です。そのために、何をかしなければならないという考え方を捨ててはどうか」

と発言されました。

現在、介護福祉士のあり方と養成方法の見直しが進められています。その中で、認知症高齢者だけでなく、精神障害者や知的障害者も視野に入れて、身体介護中心から心理・社会的ニーズにも対応できる全人的なアプローチが求められています。当然ながら今まで以上に高い専門性が求められますが、利用者の方に流れる時間や感覚に合わせてゆったりと待つという技術をどこかに置き忘れないようにしないといけませんね。

|

« ちゃんこ鍋 | トップページ | 私学共済①<年金・医療保険> »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/187148/11807875

この記事へのトラックバック一覧です: 「捨てる」:

« ちゃんこ鍋 | トップページ | 私学共済①<年金・医療保険> »